私は父が好きではありませんでした。憎んでいた時もあったのです。理由は父に借金があったからです。私達家族は、父のつくった借金のせいでとても辛い思いをしてきたのです。
子供の時は貧乏生活をしてきました。テレビはありましたが、めったに見る事はありませんでした。古くて狭い市営住宅に住んでいたので、子供部屋なんてありませんでした。家族四人で一部屋で寝ていたのです。友だちはおもちゃをいっぱい持っていましたが私はお人形を持っていただけです。雑誌を買ってもらう事もなくて、外食だってした事はありませんでした。
それも父の借金返済のためだったのです。母は朝から晩まで働いて、ずっと働きづめだったのです。古い洋服を着て、新しい洋服なんて買ってもらえませんでした。友だちとも遊びに行けずに、私は一人でいる事が多かったです。とにかくお小遣いもなかったので、何もできなかったのです。
借金があるからだとわかっていました。でもよその家には借金なんてないんだな、と思ったらとても辛くなったのです。